大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和25年(れ)1664号 判決 1951年4月10日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人佐藤直敏の上告趣意は、末尾に添えた書面記載のとおりである。

上告趣意第一点について。

憲法二五条は、国の刑罰権を制限する趣旨のものではなく、従って原審の被告人に科した罰金刑が高額であるため被告人の生活が最低限度以下に陥るというような理由で、原判決が憲法二五条に違反するという所論の主張の理由ないことは、当裁判所大法廷の判決(昭和二二年(れ)第一〇五号同二三年四月七日大法廷判決)に徴して明らかである。されば、所論は採用できない。

同第二点について。

刑訴応急措置法一三条二項が憲法に違反するものでないことも、当裁判所大法廷の判例(昭和二二年(れ)第五六号同二三年二月六日大法廷判決、昭和二二年(れ)第四三号同二三年三月一〇日大法廷判決)とするところであるから、右規定の違憲無効であることを前提として、原判決の量刑不当乃至事実誤認を主張する所論は採用できない。また、政府の免許を受けないで酒類を製造した者が、統制額を超過して販売する目的でその酒類を所持する場合には、酒税法違反罪のほかに物価統制令違反罪が成立し、両者は併合罪となるものと解すべきであるから、原判決には所論のような違法はなく、その他事実の認定に関して違法があることも認められないので論旨は理由がない。

よって、旧刑訴四四六条により主文のとおり判決する。

以上は、裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例